「表記のルールを決めて渡せば、外注ライターの原稿はそろうはず」。記事の外注を始めるときは表記の統一表が真っ先に用意されるため、ガイドラインといえば表記の決まりだと思われがちです。ところが、原稿の品質をそろえるのは表記の一覧ではありません。全記事に共通する決まりを、守れたかどうか判定できる文で書き、差し戻しの根拠として使い続けるガイドラインです。
本記事では、入れる項目とひな形から、決まりの書き方、作る手順、渡し方と運用まで、記事の制作と品質管理を請け負う立場の視点で順を追ってお伝えします。
- 全記事に共通する決まりはガイドラインに、記事ごとの指示は依頼書に書く
- 決まりは、守れたかを第三者が判定できる文で書く
- 直近の原稿に入れた直しを材料にして作る
- 差し戻す基準、セクションの役割、提出前の点検の3つの層に分け、下の層から渡す
- 差し戻しには決まりの番号を添え、見直しでは足した分だけ削る
記事制作ガイドライン(レギュレーション)とは
記事制作ガイドラインとは、メディアに載せるすべての記事に共通して守る決まりを、1つの文書にまとめたものです。文体や表記、構成、出典の示し方、使わない表現、納品の形式などを定め、書き手が変わっても記事の仕上がりをそろえるために使います。
「記事作成レギュレーション」「執筆ガイドライン」と呼ぶ会社もあり、呼び名に業界で決まった使い分けはありません。大事なのは呼び名より、文書の中に何を入れて何を入れないかです。

記事ごとに変わる指示は、ガイドラインではなく依頼書に書きます。キーワードや想定読者の設定まで書き足すと、文書は記事の本数だけ膨らむからです。表記ルールとトンマナの定義は全記事に共通するので、ガイドラインに含めます。トンマナの決め方は複数ライターで文体を統一する方法で詳しく扱いました。
原稿の品質がそろわない3つの原因
ガイドラインを渡しても原稿の品質がそろわない原因は、決まりの書き方、記事ごとの指示の混ざり方、差し戻しでの使い方の3つにあります。
表記ルールも禁止ワードも渡しているのに、毎回同じような直しを入れています。ライターを替えたほうがよいのでしょうか。
ライターを替える前に確かめたいのは、入れている直しの中身です。
編集部
直しを表記の直しと、「何を書くか」「どの順で書くか」の直しに分けてみてください。後者が多いなら、ライターより先にガイドラインの決まりを見直す必要があります。
判定できない文で書かれた決まり
「わかりやすく書く」「読者目線で書く」は正しい方針でも、原稿のどこが違反しているかを指せません。直しの基準が編集者の感覚に移り、何を変えればよいかが書き手に伝わらないため、同じ直しが繰り返されます。
記事ごとの指示が混ざった長い文書
記事ごとに変わる指示を書き足したガイドラインは、数十ページに膨らみます。書き手は書いている最中に必要な決まりを引けず、記憶に頼って書くため、決まりから少しずつずれていくでしょう。
差し戻しに使われないガイドライン
直しを入れるときに反した決まりを示さなければ、書き手は「守っても直しは別の基準で入る」と受け取り、文書を読まなくなります。表記ルールで守れるのは文章の見た目、つまり品質の下限までです。中身の直しが多いのに、決まりの側に中身の基準がない状態も、品質がそろわない原因です。
ガイドラインはあるのに、差し戻しと見直しまで手が回っていませんか?
Writers-hubの記事コンテンツの制作支援では、レギュレーションの策定から品質管理の流れまでを組み、担当者が替わっても品質が落ちない体制をつくります。
ガイドラインに入れる項目と、依頼書に回す項目
記事制作ガイドラインに入れる共通の決まりは、次の10項目が基本です。
項目 | 決まりの書き方の例 |
|---|---|
1.目的と読者 | 外注している企業の担当者が、制作の進め方を決められる記事にする |
2.文体とトンマナ | です・ます調で書き、一人称は「私たち」にする |
3.表記 | 「出来る」「等」は「できる」「など」と書く |
4.構成 | 各見出しの最初の段落で、見出しの問いに答える |
5.出典と事実確認 | 制度や数字は公式の資料を根拠にし、リンクと確認日を添える |
6.引用と画像の権利 | 画像は自社撮影か商用利用できる素材に限る |
7.禁止表現と法令 | 「必ず」「業界一」は、根拠の出典を示せる場合だけ使う |
8.AIの使い方 | AIの下書きでも、数字と固有名詞は書き手が公式の資料で確かめる |
9.納品形式 | Googleドキュメントで納品し、見出しはスタイル機能で付ける |
10.提出前の自己点検 | 点検項目ごとに、当てはまる箇所を原稿から引用して添える |
依頼書に回す6つの項目
依頼書には、記事1本ごとに変わる次の6つを書きます。
- 狙うキーワードと、検索する人が知りたいこと
- その記事の読者と、読んだ後にしてほしい行動
- 構成案(タイトルと見出し)
- 文字数の目安
- 使ってほしい資料、取材メモ、社内の事例
- 納期、報酬、原稿を確認する担当者
社内の事例のように検索しても見つからない材料は、ガイドラインではなく依頼書で渡します。依頼書の書き方はコンテンツブリーフの書き方で整理しました。
法令と権利に関わる決まりの根拠
禁止表現と引用の決まりは、誤りが会社の責任になるため、根拠の法令を添えて書くのが安全です。
景品表示法第5条第1号は、商品やサービスの品質などについて、一般消費者に、実際のものや競争関係にある他社のものより著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)を禁止しています。消費者庁は、誤って表示してしまった場合も規制の対象になると説明しています。
※ 消費者庁「優良誤認とは」(2026年10月28日確認)

引用の決まりには、著作権法第32条の条件を書き写します。引用できるのは公表された著作物で、その引用は「公正な慣行に合致するもの」であり、「引用の目的上正当な範囲内」でなければなりません。医療を扱うメディアでは、薬機法や医療広告の規制を誰が確かめるかも決めます。

※ e-Gov法令検索「著作権法」第32条(2026年10月28日確認)
守れたかどうか判定できる決まりの書き方
記事制作ガイドラインの決まりは、守れたかを第三者が判定できる文で書きます。別の人が同じ箇所を指して「ここが違反している」と言える文なら、差し戻しの根拠に使えるからです。
「専門用語を多用しない」は、何回からが多用かが人によって違うため判定できません。「専門用語は、初めて出た文で一言説明する」なら、説明のない用語を1つ指せば違反と決まります。
よくある書き方 | 判定できる書き方 | 確かめ方 |
|---|---|---|
読者目線で書く | 各見出しの最初の段落で、見出しの問いに答える | 人が読む |
信頼できる情報を使う | 数字と制度の記述には、発表元の資料へのリンクを付ける | リンクの有無は機械、資料の質は人 |
表記を統一する | 表記一覧にある語は、一覧のとおりに書く | 機械 |
独自性を出す | 自社の事例や現場の判断を1つ以上入れ、提出時にその箇所を示す | 人が読む |
数えられる決まりは校正ツールやプログラムに任せ、人は主張と根拠のつながりを読むことに時間を使います。言い回しの癖のような好みの範囲は、決まりにしません。
決まりに添える理由・例・確かめ方
決まりの文だけでは、書き手は例外の場面で判断できません。理由と例、確かめ方を添えておくと、迷ったときに理由までたどれます。
決まりの文 数字と制度の記述には、発表元の資料へのリンクと確認日を付ける。
理由 根拠のない数字は読者の判断を誤らせ、制度は改正で古くなるため。
良い例 「〇〇の上限は月△円です」の文に、所管する省庁のページへのリンクがある。
悪い例 「〇〇の上限は月△円ほどと言われています」とだけ書いている。
確かめ方 リンクの有無はプログラムで数え、リンク先が発表元かは編集者が開いて確かめる。
1〜2ページの判定表と3段の重さ
書いている最中に見る判定表は、決まりの文と番号、重さだけを並べて1〜2ページに収め、理由と例は別紙にします。重さは、差し戻す、編集側で直して通す、次の原稿から気をつけてもらう、の3段です。全部が同じ重さに見える文書では、書き手は何から守ればよいかを判断できません。
そのまま使えるひな形
記事制作ガイドラインのひな形は、10項目と依頼書を、書き手に渡す文書の形に並べたものです。〇〇を自社の内容に置き換え、不要な項目は消して使ってください。
記事制作ガイドライン 第1版(〇〇年〇月〇日)
0 この文書の使い方
・【差し戻し】は、守られていない場合に原稿を差し戻します
・【編集で直す】は、編集側で直して通します
・【次から】は、次の原稿から気をつけてください
・決まりにない場面は「1 目的と読者」に照らして判断してください
・質問の窓口:〇〇
1 目的と読者
【差し戻し】読者:〇〇(知識の程度:〇〇)
【次から】読み終えた読者に取ってほしい行動:〇〇
2 文体とトンマナ
【差し戻し】文体:です・ます
【次から】語り口:〇〇(理由:〇〇)
3 表記(迷いやすい語の一覧)
【編集で直す】できる(出来る)、ください(下さい)、〇〇
適用しない範囲:引用文、会社名・商品名の正式な表記
4 構成
【差し戻し】各見出しの最初の段落で、見出しの問いに答える
5 出典と事実確認
【差し戻し】数字と制度の記述に、発表元の資料へのリンクと確認日を付ける
6 引用と画像の権利
7 禁止表現と法令
8 AIの使い方
9 納品形式
10 提出前の点検
【差し戻し】点検表の各項目に、該当箇所を原稿から貼って添える
各決まりの書き方(別紙)
決まりの文/理由/良い例と悪い例/確かめ方
改訂履歴
第1版 〇〇年〇月〇日 初版
――――――――――――
依頼書(記事ごと)
キーワードと、検索する人が知りたいこと:〇〇
読者と、読んだ後にしてほしい行動:〇〇
構成案:〇〇
文字数の目安:〇〇
使う資料・取材メモ・社内の事例:〇〇
納期・確認の担当者:〇〇
適用するガイドラインの版:第〇版依頼書にはガイドラインの版だけを書き、共通の決まりは写しません。毎回写すと、片方だけが更新されたときに中身が食い違うからです。
記事制作ガイドラインを作る5つの手順
記事制作ガイドラインは、すでに入れた直しから作ります。書き手が実際につまずいた箇所だけが決まりになり、文書を短く保てるからです。
確認した原稿を数本から10本ほど用意し、入れた直しを修正履歴やコメントから1行ずつ書き出します。
どの記事でも出る直しは、共通の決まりの候補です。その記事だけの直しは、依頼書を見直す材料にします。
守れたかどうか判定できる文にし、理由・例・確かめ方を添えてください。
3段の重さを付け、差し戻しで使う番号を振ります。
1本書いてもらい、どの決まりにも当てはまらない直しを洗い出します。読者に必要な直しは決まりに足し、好みにすぎない直しは直す側がやめましょう。
ガイドラインを3つの層に分けて渡す順番
記事制作ガイドラインは、役割の違う3つの層に分け、下の層から順に渡すと守られやすくなります。一度に全部を渡すと、書き手は決まりを覚えるだけで手一杯になるからです。差し戻す基準で下限を安定させてから、セクションの役割、提出前の点検の順に足します。

第1層 書く前に渡す差し戻しの基準
第1層は、「こうなっていたら差し戻す」の一覧です。差し戻す基準は、書いたあとではなく、書く前に渡すのが原則です。書き終えてから知らされる基準は、書き手にとって後出しの減点でしかありません。
- 出典も調べ方も示せない数字を書いている
- 結論をぼかす言い回しで段落を締めている
- 競合記事の見出しを、順番まで同じになぞっている
- 読者がすでに知っている一般論だけで段落を埋めている
第2層 各セクションの役割
第2層では、見出しの並びではなく、セクションごとの役割を定義します。「〇〇とは」「まとめ」のような見出しの型は、各セクションに何を書くかまでは決めないからです。
セクション | 役割の定義 |
|---|---|
導入 | 読者が置かれている場面を具体的に描き、記事で解決することを1文で示す |
本文の各節 | 主張、根拠、具体例の3つをそろえる |
まとめ | 読者が次に取る行動を示す。感想で締めない |
第3層 該当箇所を貼る提出前の点検
第3層の提出前の点検は、項目ごとに当てはまる箇所を原稿から貼って添える形式にします。「はい・いいえ」の形では、人は無意識に「はい」を付けがちだからです。貼る形式なら書き手は原稿から実際に探すので、見つからなければ提出前に気づけます。
項目は「この記事にしかない情報はどこか」「各見出しの問いに答えた文はどれか」「数字の出典はどこか」の3つから始めるとよいでしょう。
差し戻しと見直し、AIへの渡し方
記事制作ガイドラインは渡した日から現場とずれ始めるため、差し戻しと見直しを続けます。

決まりの番号を添える差し戻し
差し戻すときは、「決まり4に反しています」と決まりの番号を添えます。書き手は理由を文書で確かめられるので、次の原稿から同じ直しが減っていくでしょう。伝え方は外注ライターへのフィードバックシートの作り方にまとめました。
番号を付けられない直しは、読者に必要なら決まりに足し、好みにすぎないなら求めるのをやめます。依頼のあとで増えた要望は違反と分けて扱い、次の依頼から依頼書に書いておきましょう。
足す基準と削る基準を決めた見直し
見直しは、同じ直しが2回出たら決まりに足し、半年ほど差し戻しで使わなかった決まりは消す候補にする、と基準を先に決めておくと続きます。法令や権利に関わる決まりは、使わなくても残すのが基本です。足すだけでは長くなる一方なので、決まりを足したら、同じ分量を削ります。
ガイドラインの効果が出ているかは、初稿の確認にかかった時間、大きな差し戻しの件数、同じ直しが繰り返された回数で確かめましょう。確認の流れは記事の品質チェックフローの作り方で紹介しています。
AIに渡す指示文としてのガイドライン
生成AIで下書きを作る場合も、ガイドラインはそのまま指示文に使えます。AIは書かれた言葉に沿って書くので、判定できる決まりほど守られるはずです。人なら察する読者の知識の程度や自社の立場も、AIには言葉にして渡します。
AIの下書きにも事実の誤りは混ざるため、出典と事実確認の決まりは、AIを使う記事にもそのまま当てはめます。
よくある質問
記事制作ガイドラインを作る前によく出る質問に答えます。
項目の抜けを確かめる土台には使えます。ただしサンプルの決まりは、作った会社の読者と直しから生まれたものです。自社の原稿に入れた直しと照らし合わせ、当てはまらない決まりは外してください。
Googleは、コンテンツの自己評価の質問に「コンテンツに誤字やスタイルに関する問題はありませんか」を挙げています。表記は、順位のためというより、読者に信頼される記事の基本としてそろえます。
※ Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」(2026年10月28日確認)

まとめ
記事制作ガイドラインは、項目をそろえるだけでは原稿の品質がそろいません。共通の決まりを判定できる文で書き、差し戻しの根拠に使い続けたとき、書き手が替わっても同じ基準で原稿がそろいます。
最初の一歩は、直近の原稿に入れた直しを書き出すことです。数本分の直しを並べるだけでも、足りない決まりが見えてくるはずです。
合同会社Writers-hubは、記事コンテンツの制作支援として、ライターや編集者の体制づくりとレギュレーションの策定を支援しています。







